璧だ。と、私は思った。

 代々木上原を歩いていた。三宅一生の財団が所有するギャラリーを見に行く時、多分、行きの時点でそのヒトは居なかった。

 井の頭通り沿いを寒いわんと思いながら次の目的地に向かう為駅へ急いでいる時、車道と歩道の間の柵に沿っていくつかの段ボールが下敷きになった、銀色のビニールにくるまれた荷物が3つ、整然と置かれていた。多分、ここで暮らしているヒトの持ち物なと思いながら近づいて行くと、3つの内の一番最後の荷物は、一番小さくて、そこには人が向こうを向いて座って居た。ダウンを着込んで、フードもぴっちりと被ったその後ろ姿は、タイヤを重ねた様な、黒いマシュマロマン。だった。

 床には道路に沿った形に段ボール、そのヒトの前には銀色のビニールシートにくるまれた箱状のもの、そのヒトはそれに足を入れて、じっと、座っていた。そして、そのヒトの後ろには紐でくくった荷物が置いてあり、彼はまるでタイムマシンか魔法のじゅうたんに乗っている様だった。そのまま、井の頭通りを走る自動車と並走して動いてもおかしくない感じがした。

 彼を含めたフォルムが完璧と思ったのだった。一生懸命働いてBMWを買わなくても格好良いフォルムのものを、彼が得ている様に見えた。彼はそれどころでは無い寒さをしのぐ為の最小限の道具なのだが、それが全て機能しているからこそフォルムが完璧に見えるのかもしれないと思った。

 私は、そのヒトに気付かれない様に近づき、その「乗り物」を撮らせてもらって、急いでその場を離れた。ちょと緊張した。ポラには、彼が白い光に向かって、走って行きそうに写った。