turn back to home「週刊電藝」読者登録

 
   
『少林サッカー』
 日本上陸!

 
 
香港の映画館。左から2番目が
チャウ・シンチーの前作『喜劇之王』
(邦題『喜劇王』)
 

 

 

 


 ワールドカップ開幕にともない、巷で話題の香港映画『少林サッカー』。近年の香港映画の公開で、ここまで宣伝費をかけているのも珍しい。一香港映画ファンとしては、これでコケたらどうなるのかと思ったが、感触は悪くなさそうだ。
 この映画を監督・脚本・主演しているのはチャウ・シンチー(周星馳)。馳星周のペンネームのモトネタとして知っているかもしれないが、香港映画ファン以外にはほとんど無名の存在だ。だが、香港ではジャッキー・チェン、チョウ・ユンファと並ぶヒットメーカーで、香港の映画興行記録を何回も塗り替えている。
 そんなことから「香港の喜劇王」として紹介されているが、その実はローカルなパロディ、えげつないギャグが満載ないわゆる「おバカ映画」。日本ではこれまでジミな単館公開か、ひっそりと出ているビデオやDVDでしか見られなかった。それがいきなり今回の日本全国公開である。古くからのシンチーファンは大喜びしているはずだ。

 90年代は香港映画界を席巻していたシンチーの映画も、ここ数年は成績が今ひとつふるわなかったようだ。だが昨夏、新作『少林足球』(『少林サッカー』の原題)が香港の映画興行記録を塗り替えたというニュースが飛びこんできた。
 これはぜひ見なければと思ったが、公開中の香港行きはならず、のちにVCDを購入。う〜む、確かに久々の傑作だった。いつもの彼の映画はセリフ回しに笑いの重点が置かれているのだが、単純なストーリーやCGを大幅に導入して映像で笑わせることで、理解の及ばない中国語+英語字幕だけでも十分に楽しめたのだ。これなら日本でも受けそうだとは思ったが、ここまでメジャーな扱いになるとは思わなかった。

 
チャウ・シンチーの前作『喜劇之王』
(邦題『喜劇王』)の香港公開時のポスター
 

 この『少林サッカー』、興行記録を塗り替えただけでなく、4月下旬に開催された香港電影金像奨では作品・監督・主演男優など7部門を受賞してしまった。
 ヒットメーカーのシンチーではあるが、これまでノミネートはされても無冠に終わっていた。この賞はたまに気まぐれなところがあっても、やはりドラマ系、アート系が主流なのだ。かのジャッキー・チェンもかつて『ポリス・ストーリー』で作品賞を得ているが、主演男優賞は獲っていない。逆にウォン・カーウァイなどは作品を出すごとに必ずなんらかの賞を獲得しており、常連男優のトニー・レオンは彼の作品だけで3回も主演男優賞を得ている。
 そういう事情があるので、今回のシンチーに対する大盤振る舞いは非常に驚きだった。ハリウッド映画に押されぎみの香港映画界が贈ったエールか? 香港映画を支えてきたシンチーに、この機会に賞を与えておこうという配慮か?

 ともかくも、実とともに名を得た『少林サッカー』。果たして日本ではどれだけヒットするのだろうか? シリーズ化されて、シンチーがジャッキーと同じくらい有名になったりするのだろうか? 執筆時点ではまだ正式公開前だけに、妄想がふくらむばかりだ。

 


▲このページの先頭へ