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text/ 高梨 晶
 

生時代、『動物のお医者さん』が流行っていた。学科の人達は(35人くらい)読んでいた。男女問わず。理系の、実験もある学科だったせいか、『動物のお医者さん』にでてくる実験風景や、けったいな教授陣に親近感を覚えている者もいた。「Hもよんだあ?」といわれた。何をいう、地味な連載当初(巻頭でもなくオールモノクロページの)から、知っているのだ。

 姉は「花とゆめ」をずっと買っていた。今でも買っているらしい。でも自分は、「花とゆめ」はちょっと苦手な雑誌だった。イメージとして、男子にもてなそうな女子が好んで読む、というイメージがあったのです。あくまでイメージ、ですよ。姉の買ってくる「花とゆめ」で「これは……!」と思ったのが佐々木倫子だった。初めて読んだのは『ペパミント・スパイ 田舎の休日編』だった。絵はその他の漫画家と比べ、格段にきれいで、微妙なうんちく。うまい、と思った。

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   や  言  い    
   ら  葉  つ    
   れ  を  も    
   た  持  同    
    ` っ  じ    
   と  て  お    
   思  く  か    
   い  る  ず    
    ` と  に    
   そ  こ   ┐   
   う  ろ  既    
   だ   ゜ 視    
   よ     感    
   な    └     
   と      ┐   
   納     デ    
   得     ジ    
   し     ャ    
   て     ブ    
   し    └     
   ま     と    
   う     い    
    ゜    う    
『林

檎でダイエット』の主人公は、姉・雁子(就職浪人、園芸が趣味、)と妹・鴫子(美大生、気が強い)という二人姉妹。読み切りで5話(他にデビュー当時の作品2話)が収録されている単行本(白泉社コミックス、1988年第1刷)。

 ところで相原コージの名著『サルでも描けるまんが教室』においては、マンガにおけるもっともいいネタとは「ポピュラーで(説明が不要)、昔から知られていて(普遍性が高い)、誰もまだ使っていない」ものがすごくいいネタ、とある。その点で言うとこの『林檎でダイエット』は「すごくいいネタ」ということになるだろう。姉妹というキャラ設定。椿を購入したいとか、より美人に挑戦するとか、ダイエットするとか、おかずのマンネリとかファミリーマンガでは必須のエピソード。ただ、アプローチが違う。ここが「誰も使っていない」となる。

 おかずがマンネリ、という回は『既視感のおかず』というタイトル。いつも同じおかずに「既視感」「デジャブ」という言葉を持ってくるところ、やられた、と思い、そうだよなと納得してしまう。その話は雁子のマンネリ気味の夕食に鴫子が怒ることから始まるのだが、話は賞味期限切れの食材を使う是非にいき、(食中毒に)あたらなかったことで話は終わる。書いてると「なんだその話」って感じですね。しかし、その日の夕食、煮物・塩サバ……ソーセージの炒め物の後者二つの賞味期限がやばそうで、どちらにあたるかわからないという説明のときに

「も

しおなかが痛くなってもどれがあたったのかわからないわね」
「じゃあアタシがソーセージと煮物を食べるから鴫子ちゃんがサバと煮物を食べれば?」
 そのあとのコマに

雁子だけ痛くなった場合 ソーセージが悪かった
鴫子だけ痛くなった場合 サバが悪かった
ふたりとも痛くなった場合 煮物が悪かった あるいは煮物とソーセージが悪かったあるいは……

と、数学の「集合」で習ったベン図が用いられるのである。

 この佐々木倫子のインテリっぽいところが好きな私は、そこに一番魅力を感じるのだけれど、件の『動物のお医者さん』では、学科の多くの人は理系に光が当てられたこととか動物のかわいさに話が弾んでいた。けれど、あのマンガで一番面 白いのは、ハムテルと二階堂の会話だろう。最近の佐々木倫子は綿密な取材に基づくであろう(あるいは原作のある)青年誌連載が主だが、『林檎でダイエット』は作者自身の体験からの作話であろうことが『林檎でダイエット』に収録されているミニマンガによってわかる。思うに『動物のお医者さん』以降の佐々木倫子はその画力の高さ故、緻密な背景や機材を描くことが楽しくなったのではないだろうか。

 ファンとしては、雁子/鴫子姉妹のシリーズ第2弾!を望んでやまないのだが……(単行本巻末に第1弾!とあるので、待っていたのだが……)。(高梨・H・晶、01/1/29号)

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   楽  緻  思    
   し  密  う    
   く  な  に    
   な  背  佐    
   っ  景  々    
   た  や  木    
   の  機  倫    
   で  材  子    
   は  を  は    
   な  描  そ    
   い  く  の    
   か  こ  画    
    ゜ と  力    
      が  の    
         高    
         さ    
         故    
p r o f i l e
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