●「グルメぴあ」という雑誌は、読者からの投票でジャンル別アイテム別に美 味しいお店を選定して紹介するという趣旨ものであるらしい。巷で噂のうまい 店が編集されて紹介されるのは便利なことではないか。読者からの情報で作ら れる民主的なメディアの一つの達成ではないか。 ●しかしながら、この雑誌は失敗するであろうと言われている。なぜなら、こ の雑誌に紹介されるお店の上位に並ぶ名前は、結局「有名な」お店でしかない から。 ●「グルメぴあ」の本来の主旨が全うされていたとするなら、昔でいえばタク シーが店の前に停まっているような掘り出し物の旨くて安い店が発見され、素 直な目で評価されるはずであったろう。 ●にも関わらず、そこに結局「有名な」店しか発見されないとすれば、それは 人々の評価が、おそらくはマスコミによって既にあたえられたものに影響され ているからだと考えられる。「有名である」ということは、「旨いとされてい る」ということであり、「旨いとされている」と言うことが「旨い」というこ とになるのである。 ●「旨い」ということが「旨いとされている」ことならば、それは「有名であ る」ということとほとんど同義であり、人気レストランのランキングに「有名 な」お店が軒を連ねていることは当然のことということになるだろう。 ●では、逆説とは何か。 ●グルメぴあは読者の直接投票によって、権威によるものとは異なるランキン グを提供するはずのものであった。しかしながら、それが実現したのは既に存 在するランキングをなぞるものでしかなかったことになる。 ●それは、横山ノックが獲得したという何百万票もの票と関連を持っているだ ろうか。 ●ところで、前回から書き始められたこの文章は、電藝批判からはじまってい た。 ●電藝の文章は、長すぎて、書かれている意図が掴みにくい。 ●したがって、この文章は、それを批判するべく、短い文章で段落を区切り、 段落の頭に「●」を付けている。 ●前回その文章を配信すると、すぐに次の感想が寄せられた。 ●「●」を使った 試みは bestだとは感じませんでしたが betterでした. 私としてはこの方向での努力を希望します. ●この感想を寄せてくださったのは、「ネットによって従来型のテキスト(論 文や評論や小説といったもの)の形式は、その歴史的役割を終えて、新しい形 式に置き換えられていくのではないか」と語ってくださった方だ。 ●私は、ネットの中で流通する新しいテキストの形がどのようなものであるの か、是非とももう少し具体的なありかたを感想を寄せてくださった貴方に訊ね てみたいと思う。 ●私は貴方に★を差し上げよう。 ●例えばこんな風に。 ★「●」を使った 試みは bestだとは感じませんでしたがbetterでした. ★私としてはこの方向での努力を希望します. ●前回、私はこの回をもってこの文章を終了すると予言した。 ●しかし私は前言を撤回し、次回にもこの文章が続くだろうことを断言する。 | text/金水 正 linking/電藝編集部
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