text/吉田直平

ソフトなければハードはただの箱、という言い方がこの業界にはある。ある時期までのソフトメーカーとハードメーカーの関係を如実に表したレトリックだが、PS2の登場はこの関係性をじつは覆すものであったのではないか。ヴィデオゲームは今一度、ハードウェアを「ただの箱」に閉じこめなければならない時に来ている。

p r o f i l e

 

 ゲーム業界は最近話題がなくて、すっかり一時のイキオイを失ってしまった。

 業界の外から見ると、Xboxだ、ゲームキューブだと華やかに賑やかに見えるのだろうが、これらはどれもこれも、フタを開けなければどうなることやらわからない。それに、結局、ソフトが売れなければ、やはりぱっとしない業界なのである。

 フタが開けなければわからないものの最たるものは、 <ネットワークゲーム> というやつであろう。ゲームに縁がない人が知らずに日経新聞などを見ると、これからはブロードバンド時代になってゲームはネットワーク対応のものとしてシフトし、だから業界の前途は洋々、というふうに見えてしまいそうなのが、コワい。

 これはあくまでもゲーム業界自身が描いた希望あふれる未来図であって、「Diablo」「Ultima Online」「信長の野望 Internet」というようなPC上のネットゲーム、あるいはドリームキャストをプラットホームとする「ファンタシースターオンライン」などに参加してみれば、その楽しみがゲームにあるのではなく、プレイヤー相互のコミュニティ形成の側にあるということがわかるはずである。つまり、ゲームはチャットのおまけなのだ。

 すでにフタの開いた話題としては、「鬼武者」や、最近では「GT3」といったビッグタイトルがあるが、1999年時点でのPSソフトには、その程度のヒット作はゴロゴロしていた。SCEのソフト売上は、PS2発売後、およそ10分の1程度にまで縮小したのではないかと思われる。

 そう、販売店も口をそろえて言う通り、この状況を加速したのはPS2なのである。

 ハードウェアとしてのPS2をめぐっては、初期ロット不良から、リモコン発売時期の評価の是非、いわゆる30000番台ロットの問題、そして今度は「GT3」抱きあわせ販売の評価の是非、去年から秋葉原では普通 に売られていたPS2用のUSBモデム、7月に発売されるハードディスクユニットの仕様、ユーザー認証システムなど、2000年3月4日の発売以来、ほとんど話題が途切れることもないほど状況の変化はめまぐるしい。

 あらゆる問題を一身に背負い、PS2のハード普及は伸び悩み続け、1999年のPS台数には決して追いつかない。ソフトをめぐる話題に華やかさがないのはこのためで、PS2が発売された以上、いくら「FFIX」がPS上で動こうともはや前作の数字には及ばず、スクウェアは赤字決算に転落してしまった。

 ソフトを語らずにはいられない声がハードを語る声を凌駕するときを、筆者はひたすら待つものであるが、それは今年中に訪れるか。

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