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text/ 高梨 晶
 

ンクまでも商業主義に堕してしまったとマルコム・マクラレンなんかの悪口が飛び交っていた頃、イギリス周辺ではポストパンクムーブメントというのが登場した。ジョセフK、オレンジジュース、そして現在でも活動を続けるアズテックカメラなどがその代表格。ノイジーなギターサウンドを排した演奏スタイルからネオアコ(ネオアコースティックの略)と呼ばれた。「今いちばんパンクであることはちゃんとした曲をかくことだ(笑)」。彼らはアメリカのA&Mのレコード、特にバート・バカラックの曲やソウルミュージックに影響を受けた音楽を始める。このあたりから1990年代初頭の再評価ブームにつながる流れは省略。マンガ時評だし。とにかくそれでもパンクであろうとした若者が当時いたわけである。

 さて1989年、私は大学生になった。フレンチカジュアルという言葉をよく聞いた。それからアメリカ人が着古したラコステのポロシャツ(小さい頃はかっこわるいという理由で親が着せようとするのを嫌がった)を法外な値段で購入するとか、ジーンズを洗濯しないとかそういう、大人が眉をしかめる行動を若者が取り始めたのもこの頃だったと思う。彼らはクラブという場所に集まり週末を過ごす。そこでDJ(ディスクジョッキーというより選曲家である、ようするに)によって流されるのが折りしもの再評価ブームで火がついた古い音楽とその影響を受けた新しい音楽だった。そしてそこで聞いたレコード盤を探しに渋谷の宇田川町界隈にある中古レコード屋にこぎれいな若者が集まる。後に「渋谷系」と呼ばれる人たちはここらあたりから出てきた。

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て、私より4〜5年年上のよしもとよしともは、この、前「渋谷系」、ポスト・パンク世代を通 過している。『青い車』は刊行が1996年、収録されている短編は91〜96年発表のもの。大学の映画研究会が撮る映画を思わせる(もちろんよくできているのだが)ありがちなストーリー。この短編集の中で興味深いのはH型の転倒防止器具である。1995年の阪神大震災のイメージがこの短編集に繰り返し現れるのだが、それが何を意図しているのか。よしもとの意図するところはよくわからない。しかし上記の世代を経てきた私は、なぜか何度も何度もことあるごとにこのマンガを読み返してしまう。幅広い読者層を獲得することはまだなさそうだが、パンクを引きずった大人たちの不安と希望を表現させたら今のところよしもとの右に出るものはいないのではないかと思う。 (高梨・A・晶、00/11/20号)

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