特集 塚本敏雄
 

 詩の朗読の現場に、初めて立ち会った。家人がその、朗読のBGMを、担当したからである。詩の朗読に音楽をつけるって、それはなにかい、歌になるのか? いや、違った。後ろに音楽が流れている。そこに、詩が読まれる。ふうむ、と思った。即興のようでいて、その実、塚本氏は結構ここは淡々と読むべきか、いや、もっと調子を上げたほうがいいか?と、即興ではないらしかった。
 その後ろで塚本氏の奥様は肩をすくめてらした。「お好きに」といった風に。しかし、詩を詠むことを日常としている旦那さんがいるって、どんな感じなのだろう?
 娘さんたちもその現場に同席していた。詩に登場している娘さんだ。「この詩は、あなたのことだねえ」というと、ちょっと恥ずかしそうにしていた。お父さんが詩を朗読している間、娘さんたちは家人のキーボードで夢中で遊んでいた。自分のことを詩で詠まれるって、どんな感じなのだろう?
 塚本氏の家に立ち寄った折り、所在ないなあと、思っていた私に娘さんたちは飼い猫を抱かせてくれた。客人へのもてなしらしい。ぐったりとした大きな黒い猫だ。「名前は?」と聞くと、「くろちゃん」。くろちゃんは生暖かい、おとなしい猫だった。詩で詠まれている猫だ。くろちゃんは、自分が詩で詠まれることを、どう感じているのだろう?