Italian Rock Paper Sleeves
=================================================================================================================== 2005/4/17 イタロ不感症の探検隊がこんな特集くんでいいのか?何度もサイト上でイタリアン/ユーロロックはダメダ〜、すいません わかりませ〜んといい続けているではないか?でも、昨今こんだけイタロ紙ジャケがジャンジャカジャンジャカ発売され、 とんでもないギミックジャケのオンパレードが続くとやっぱりなんとかしないとな、とも思うのだ。 不感症、っつうても、ま、イチオー紙ジャケが出れば買ってきいたりしてたわけで、PFMくらいは知ってるし、この間の 来日公演もいったのだ(ほとんど、曲がわからなかったが・・)。そういやキングから昔LPで出たイタリアン・ロック・ コレクションは何枚か買ってきいたりしてたではないの・・(でもハマらなかったのよね)。そもそも私のイタロの印象、 そのルーツは、コレ。toppage database左:日本盤 右:米盤 「第二次世界大戦」てゆう映画のサントラで、いろんなヒトがビートルズのカバーをしているのだが、リチャード・コッチ ャンテっていうイタ歌手がこともあろうに「ミシェル」をカバー。第一印象がウワァ!オオゲサー!!であったのだ。2度 聴いて「アタマイテー」だったのだ。これがよくなかったのだろう。 でも、イタリア・オペラは好きなのだ。プッチーニは好きだ。レオン・カヴァルロも好きだし、歌手でもデル・モナコとか 好きではないか・・・。探検隊でもっともプログレ好きのY隊員はこの間イタ車買ってたぞ。イタめしもアズーリ(サッカ ーイタリア代表です)も好きだし、イタリア観光も2回くらいはしてるのだ。 なぜイタリアン・ロックだけダメダメなんでしょう? とゆーことで、今回は強力な助っ人をお願いしてみた。ノイさんと某イタリアものコレクター(以下略で、イタさん・・)、 よろしく教えてくださいませ。わたし、イタロがわかりません! ..... ロヴェッショ・デッラ・メダーリャ
新着情報で、オリジナル知らないんで再現度はわかりませんが、よく出来てます。などとトンチンカンなことを書いてしま っている探検隊。果たして今回出た注目のメダーリャは実際のとこドーなんダーリャ?(イタタタタ・・)でた!これが、「イオ・コメ・イオ(我思う故に)」のオリジナル盤だ!イタリア語でいうとORIGINALE。 オリジナーレ?「そーれ、オリジだぞー!!」って感じか? おおおお、っと固唾をのんでいる私の横でノイさんはイタさんとフォルムラ・トレのセカンドをこねくりまわしながら DGがあるとかないとか、マトは1Sなんだけどその後の数字がどうとか、裏ジャケの日付が3ヶ月違うとかいってる。 そーですか・・・。 わたしはまだイタロ、そこまでいってないんで、とりあえずガンガン進めるのだ。まずはメダルだもんね。
地中海を思わせるブルーのRCAレーベル。RCAなんていうメジャー会社ですらこんなバカなジャケで発売してしまう とこがイタリア。 で、DGつき。Deep Groove。いわゆるレーベル上の溝のこと。あーここでもまたDGつきの話題か。 考えてみればDGというのは不思議だ。50年代のLPは全世界的にほぼDGつき。米国東海岸は60年代初頭に少なくな っていき、西海岸は60年代末までDGつきがあったりする。だからジャズだとDGがついているだけで1万円くらい値段 がハネあがるアルバムがあるのに、逆にロックだとDGつきが嫌われるアルバムがある。で、イタリアは70年代半ばまで DGつきが生き残っていて、ここではわりとありがたがられている。プレス機が新しくなるとDGがつかなくなるという 説もあるので、それ自体が音に関係があるとは思えないが、プレス時期の判断には重宝するということか。
メダルをはずしてみた。左は今回の紙ジャケ(BVCM-37583)。メダルの色味はけっこう違う。 で、イタさんいわく、使い込まれた100円玉みたいのが本物の色で、 磨いてしまうとメッキが落ちて新しい10円玉みたいな色になるとのこと。 また、メダル自体はそんなに珍しくない、とのこと・・えええ? 「珍しいのは、メダルをジャケに固定するための厚紙。これは珍しいです」 なんだかホワイト・アルバムの保護紙みたいな話だあー。しかしメダルが珍しくない、ってどんなレベルの話なのよ。 廃盤レベル8くらいすかね? で、このアルバム、初回ジャケなのにメダルの付いていないシールド品という不思議なものもある、とのこと。 イタリアRCA、変わったことやるんだな。
こちら本物。ノイさん曰く「穴の周囲の形が違う」・・うーん、ノイさん、そこまで紙ジャケにもとめなくとも・・。
イタ「バンド名はメダルを裏側からみるとちゃんと読める。なにしろこのバンド名、「メダルの裏側」って意味」。 なるほど!そういや表ジャケのバンド名も、「ロヴェッショ(裏側)」ってとこだけ律儀に裏返ってたなー。 素晴らしくバカだな、イタロって。 ところで、紙ジャケメダルの裏側はどーなってんだろ? っと、ベリベリと白い台紙からはがしてみると・・。
おお、やるじゃないの!ちゃんとなってるようだぞー。”イル”のとこもこそぎ落としてみよっと。
紙ジャケメダルの裏側だ。バンド名が読めるぞ!(ってここは喜ぶとこか?)
本物とならんで記念写真(ちゃんと撮れよー)。 .... まぁでもメダルはなかなかよく出来ていることが判明・・。が、しかし、ジャケの方がちょっと問題あり。 イタ「あー、なんでこんなにしちゃったんだろーねー」 どんなにしちゃったんですか?イタさん!? .....
.... あらま、確かに内ジャケにはっついたインナーが全然チガウでないの。オリジナルは3ツ折りにできるようになって いて、その部分は真っ黒。しかしなんで3ツ折り仕様なんだ? イタ「これはここ折って、メダルをインナーの後ろのジャケに貼っても表から見えるように考えたのではないかと」 なるほど! イタ「で、考えたんだけど、結局貼って売るのがムリそうだったんでヤメたんじゃないかと思いますね」 ヤメたのか・・その名残?さすがラテン系だな、イタリア人! んでもって紙ジャケはインナーの幅がなんだか狭くなってて、写真が一枚多い。 ......
..... しかもこの写真、インナー裏の写真と同じものではありませんか?ダブってます。どーしたんだこれ?こんな再プレ スもあったんだろうか? しかもだ、インナー裏側に本来あるべき写真が足りないぞ?このベーシスト(なのかな?)どーするんだ?写真なく なってるけどいいのかなぁ。 さて、イタさんに教えてもらったこの紙ジャケの成り立ち?をノイさんにまとめて もらったのが以下のもの。 1.三つ折りがあることからしてもジャケのデザインはメダルが内ジャケに 貼りついているのが「我ここに鎮座す」だったのでは? ↓ 2.でも工場でメダルの位置決めをして貼り付けるのがメンドーだったんで 厚紙に貼ってシールドで出荷したと。んで、買った個々人はメダルを ジャケに貼り付けて中のページを三つ折にすればそれで完成〜 (って組立説明書は付いてないのか?ツメが甘いぞRCAイタリアーノ〜) ... で、イタさん曰く、ジャケは3種類あって、穴から写真が見えるものにはメダルが付いてることはないし、 また、このインナーにメダルを印刷したもうひとつの再プレスの方が珍しいとのこと。
これです。これが印刷メダル。
で、このように内側のインナー表に印刷してあって、ジャケ表は律儀に丸くくりぬかれている。 印刷しちゃったんならくりぬく必要あるのか?ジャケ表に印刷すればすむことではないかと日本人の私は思ってしま うのだが、イタリアンは考え方が根本的に違うのだろう。
つづいてメダーリャの3rd。コーティングが美しい。
見開きだ(見りゃわかる)。 ファーストのメダル型インナーも見せてもらったのだが、写真取り忘れた(やる気あんのか!?)。 .... ジェット
ジェットなのかジェー・イー・ティーだか私にはわかりません。今回の紙ジャケシリーズではジェットと表記されい る。そのオリジナル盤。厚紙グラス・ジャケだ。開いてみたところ。美しいのだ。
厚紙だ(わかってるよ)。
80年代末に出た日本盤LPは、自分でこのグラスを切り抜いて内ジャケにはっつけるようになってたそうな。 やってみた人、いたんだろうか? そんで今回の紙ジャケリマスター、なんだか音がひしゃげたり、つぶれてたりしてる上にユレたりもしている。 一体こりゃどっからマスター持ってきたんだ?てな音。で、試しにオリジナル聴いてみる。あ、なんかスゴク いい音なんだけど、傾向はいっしょだ。 イタ「この盤も、完璧にひずまないヤツがないんですよねー」 とのこと。試しに紙ジャケCDを聴いてもらうと、 イタ「あ、そうそう、こんな感じで音がでかいとこで歪む、これが普通なんですよ」 だって。じゃ、あれか・・・盤起こしっぽいってことね・・。 最近は盤起こしでもちゃんとやればヘタったオリジナルマスターよりいい音になったりすることがあるのだが、 それもチャーントやれば、ってことで、中途半端な盤でやると・・これ以上ゆうのはやめておこっと。 ホントのとこはわからないしー。 ま、ジャケに関しては紙ジャケもよくできていたということで。
ジェットのシングル。顔はムサいがなんとなく青春っぽいPSである。同じバンドとは思えない。 .... フンカ・ムンカ
続いてトイレットジャケ。オリジナル盤。バラは芳香剤かしら・・。
トイレのフタを開くとビルの上に家が・・この内側をよくみといてくださいねー。
後ろにある白黒の顔がオリジナルのインナー。 で、手前のシングルはさっきのフタ裏の家と写真を再構成したものになっている。 ファン(いるのか?)はシングルもそろえましょう。 .... バンコ
ええーい、イタさん、この際なので以前紙ジャケになったヤツのオリジナルも教えてください! ということでまずはバンコの壺。ツボ、といわれてますが、まぁ実際はバンド名にひっかけた貯金箱ジャケ。 イタリアの貯金箱としてはポピュラーな型なのかな。![]()
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おそるおそる開けさせてもらった。オリジナルの色味はなかなかそそる。 しかし当時のレコード屋はどうやって店に置いてたんでしょう。 ノイ「アタマのでっぱりと足を切っちゃって丸にして置いてたのもあるみたいよ」 とのこと・・あんまりな。 ... 続いて扉。
右の内袋はオリジナルではない。A&Mの内袋を改造したもの。 このアルバム、実はジャケにあわせた形の内袋があったのではないか?との噂がたえないそうだ。深すぎる・・。
扉がいっぱい。左端が写真の細部からいっても初版だろう、とのこと。
上が初版。 でもこれ、紙ジャケもそうだったけど、綴じ方間違ってて曲順とあってない・・・これでいいの? ノイ「この色味、紙質で綴じ方が合っているのもあれば、間違ってるのもあって。で、間違い方も数種 ある」 だって。よーするにいーかげんだったってことすか?こんなことで悩んでるのは日本人だけでしょうかね。
バンコのバレエ音楽用の曲のアルバム。何枚目にあたるのか、わたしにはわかりません。でもコーティング がとても美しいのだ。イタリア盤のコーティングって実にきれいだ。右はインナー。
右がこのアルバムの、バンコの作品ではなくてバレエ音楽の作品として発売されたジャケ違いだそうで、とても珍しい とのことだ。わたしは思わず「オオーっ」と感嘆の声をあげちゃったのだが、イタさんから「って、知らないでしょ、 こんなのがあるなんて」と指摘されてしまった・・・はい、知りません。 見てもスゴイのかどうかもわかりません・・・。 .... アレア
つづいてアレアのピストル。なんでも出てくるんだなー、イタさん。でも今回はそんなに珍しいのは紹介 してなくて、”ゴクフツーの廃盤”ばかりなんだそうな。はひ〜。オリジナルのピストル。
上がオリジナルのピストルで下がリイシューについてたもの。撃鉄の部分のかたちが違う。色味も違ってみえる。 ... その他もどんどこ・・
いやー、もういっぱいだ、もーたくさん見ました、知恵熱だしそーです、とすでに腰が引けてる私なのだが、イタさん はまだまだ地獄の一丁目だぜ、といった風情っす。ノイさんは横でニヤニヤしている。 イタさんに「×××は紙ジャケになってますか?○○○はどうですか?」と矢つぎばやに質問されるが・・スイマセン! なんとかダッラとかデッレとか、なんちゃらッシオとかいわれても、名前とレコが結びつかないんです〜ウウウ。ジャケ を見てはじめて、「あ、これ紙ジャケになってます・・ええ、わりと面白かったです」というていたらくなので・・。 で、これは?といわれたのが・・ ...... 「あ、これ、知ってます!紙ジャケで聴きました!」(情けなや・・)。ラッテ・エ・ミエーレの受難劇だ! テクスチャージャケならオリジナル、ということで、あーよかった(なにが?)。 ...
... で、なんですか?・・インサートが!?・・・フンガ〜!!
マクソフォーネのオリジナル。アイロンプリントつき。
アイロンプリントしたヤツいたのか?(こればっかりだな)
そのレーベル。なんかいい音してそうだ。
オザンナのファースト。3面開きでたてに開いてカベにかけられるようになっている。
これがフックの本物。これで掛けるワケね。
フックを開いたとこ。もともとフックが付いていないのもあるけど、内側に形がつくので 外されたのかもともとないのかは区別がつくのだそうな。
紙ジャケ化の時苦労しただろーな、と想像させる金ピカジャケのトリアーデ。
これ、特色ではなくて金メッキした板(?)が表ジャケにはっつけてあるのだ。こんなもの紙ジャケにできねーよな。 いい加減しろよ、イタリア人、と叫びたくなるが、限度をしらないのがイタロの魅力か。そういや音も盛り上がる時 はむやみに盛り上がってくもんな。 .... 続いて「こういうのも紙ジャケ化されると面白いですよね」とイタさん。
プラスチックジャケのKのクラスターの1st。
スペインのイトイスは観音開きジャケ。
イトイスの裏ジャケ。XOXOAレーベルの鳥マークがかわいい(音はかわいくないんだろーな)。 そして私でも知ってる名盤、ニュートロルスの「コンチェルト・グロッソ」
見開きトップオープンのジャケ。これもコーティングが非常に美しい。
内ジャケもキレーだ。 ついでに何枚かニュートロルスのシングルを聴かせてもらう。で、これが凄かったのだ。 圧倒的な音質と音圧で迫るドハードな演奏!うねりまくるファズギターに鉄槌のようなリズム! ウヒャー!イタロを聴いてこんなにカンドーしたのは初めてだ!ニュートロルスってこんなバンドだったの? イタ「ニュートロルスはアルバムだけ聴いて判断しちゃいけないんですよ。シングルのみのいい曲がいくつもあるんです」 ホントだ、ハードじゃん、これ。展開はあいかわらず唐突だけど、めくるめく暴虐絢爛の宴。これにはイタロ不感症の私 もまいりました。ノイさんも口をアングリしている。イタリアのシングル、ってこんなにすごい音質だったんだ・・英盤シ ングルもいい音のものはあるけど、上下を切って中音が強いためにこんなに自然にドバーっと伸びてるのは少ないと思う。 ほら、続いてアレアの片面プロモだ!マウロ・パガーニのプロモのみシングルだー!っと、ひえーもう勘弁してください。 ノイさんすでに欲しくてたまらない様子。あ、ノイさん、よだれが・・・。 イタさん、「マーキーの『イタリアン・ロック集成』、シングルのとこ読んでないの?」ときかれても〜 「すいません!『ブリティッシュ・ロック集成』しか持ってません!!」 いやーイタロシングル恐るべし! 傾向として当時はハード系よりシンフォ系の方が人気があり、シングルが売れればアルバム出してやろうという会社の意 図から、ハードなのはシングルだけで終ってるのが多いのだそうな。 しかし絶句・・・ ---------------------------------------------- つうことで探検隊はじまって以来の猫に小判レポート、いかがでしたでしょうか? イタさんによるとイタリアの廃盤も最近は価格の高騰が激しく、日本人が日本のロックのレア盤に熱いように、やはりイ タリア人が熱く収集しているそうな。てなこともあって日本人コレクターは最近増えていないらしい。でもこんなに素晴 らしいならどれがオリジナルなのか、プライスがどれくらいなのか、ある程度ガイドラインがはっきりしていれば欲しが る人も多いんじゃないだろうか?とりあえずイタリア名作のオリジナル盤10選とかの解説があればとっつきやすいのに、 と思った次第です。 私ですか?私はとりあえずシングルからイタロをせめてみようかなー・・・。 それにしても無知な探検隊をみちびいていただいて ノイさん、イタさん、ホントにどうもありがとーございました! そ、それでは最後に、イタさんから今回の特集の感想をいただきましたので、掲載しようと思います。 では、どーぞ。 ///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////// なんだかわからないうちに巻き込まれた紙ジャケ探検隊。今回の件があるまでHPの存在すら知らな かったです。紙ジャケも持ってないし。とはいえ、今は廃盤まみれの生活してますが、昔はキングやポ リドールのアナログ再発シリーズを買い込んで育った世代。事情がわからないわけではないし、ある種 の懐かしさも感じます。 訪問記の草稿をいただいて読んでみると、なんだか原盤との違いを指摘してばかりですが、昔はレ コード会社から金もらって書いてるライナーやレコード会社に広告出してもらってる雑誌記事などばか りで、そうしたものに中立的で批評的な文章は期待できませんでしたし、コストが安くレコード会社に 依存していないインターネットというメディアならではかなとも思います。RDMのメダル付きなどは 原盤資料を提供してる方の見当が付いてしまいますが、その方はメダルの色や初回ジャケがどういうも のなのかよくご存知のはずで、今回のが初回仕様にならなかったのは、初回の現物を使おうという努力 を手抜きしたのだとしか思えません。 しかし、これは強調しておかなくてはなりませんが、今回の紙ジャケ・シリーズは製作コストが気に なるような手の込んだものが多く、かつてのアナログより再現性はずっと高いです。ディク・ディクな んて裏側観音開きの変形なのに国内盤LPはただのシングル・ジャケだったし、RDMの1st、2n dなんてそもそもリリースされなかったし。 この変形ジャケはすごいとか内容がいいとかイマイチとかはCDを購入した人がそれぞれ判断するこ とですし、今ではそれをネット上で分かち合うこともできます。そうではない視点から2つほど。 上でRDMの原盤資料提供者にケチをつけてしまいましたが、この方が提供しなかったらメダルは付 かなかったかもしれませんし、もしかしたら発売されなかったかもしれません。オリジナルのメダルは たぶん日本に多くても20個ほど、50個は絶対ないでしょうし、レコード会社が連絡を取ることが可 能な所有者はさらに限られてきます。これはメダルに限ったことではないのですが、ヨーロッパのプロ グレみたいなマイナーなジャンルでは、再発されるタイトルのジャケット版下がレコード会社に保存し てあるわけではなく、発売したいタイトルのジャケットをコレクターから借りて複写するのです。権利 があってマスターテープも手元にあるのにジャケットが見つからなくて発売できなかったという実例も あります。 レコード会社が持っているのは発売する権利だけです。日本のレコード会社が、ヨーロッパのとある レーベルの発売権利を系列会社の関係でたまたま獲得したとしましょう。しかし、そのレーベルのカタ ログから何を発売すればいいのかを知っているのは、原盤を揃えてちゃんと聴いて内容を把握している コレクター諸氏であって、レコード会社の社員は音を知りません。「何を出せばいいでしょう?」とコ レクターに相談することになります。人気度を説明し、音を聞かせ、出すことに決まればジャケットを 貸して、と、ユーロ・プログレ系のマイナーどころの再発はコレクターに対する依存度が極端に高いの です(この点、紙ジャケ探検隊の掲示板にも書き込んでおられる片山伸氏は音を知っていて、原盤所有 者も知っていて、業界内のこともよく知っているという特異な立場におられます)。CDのみのコレク ターも大勢いるのですがこの方たちの知識や所有物は、「かつてCDで出たことがある」という範囲内に 限られてしまい、未CD化作品をCD化する時には役に立ちません。新たな原盤コレクターが育たない と10年後20年後にどうなってしまうのか、不安を覚えます。 マイナーなジャンルにおいて外部識者に依存せざるをえないレコード会社側、つまり売る側の問題は 買う側の問題に直結します。アレを出してほしいコレを出してほしい、どうせならオリジナル通りの変 形で、というシンプルかつもっともな要望と裏で結びついているのです。 10代の頃には自分が聴きたい音楽が普通のレコード屋さんで買えないという事実がなかなか飲み込 めませんでしたが、だんだん音楽は商品であり、手に入るのかどうかは市場の原理によって左右される のだとわかってきました。単純に言えば、十分売れるのなら何でも出るのです。 原盤コレクターの極端に狭い世界ほどではなくても、ユーロ系プログレはやはり商業的にとても狭く マイナーなジャンルであることをCDのみを買う層の人たちがわかっていた方がいいだろうと思います。 今回の紙ジャケ・シリーズは10枚まとめて出ました。LPの時代から単発で出ることはまずありま せん。ファンに何枚かまとめて買ってもらおうという意図もあるでしょうが、複数タイトル同時発売で ないと、単発では雑誌広告費も出ないのでしょう(1ページ1アイテムの広告、見たことあります ?)。 あるレコード会社のお偉いさんから「1000枚売れてくれるのなら何でも出す」と聞いたことがあ ります。インディーという名の自主制作が進んでから、いわゆるレコード会社はひとくくりにメジャー と呼ばれていますが、会社の規模には大きな差があります。「1000枚売れてくれれば」と言ったの はメジャーの中では小さな会社の方でした。対して、大きな会社では1000枚しか売り上げが見込め ないのでは出そうとしません。もう15年も前になりますがサン・ジュストやレオ・ネロ、ボッテガと いったEMI系のタイトルが発売されましたが、再発はされずそれっきりです。大手EMIが自身では 出す気がないタイトルを大手とはいえないキングが一度だけ発売する権利を買ったのだと思います。売 り上げが見込めればこういう面倒なこともやってくれるのです。逆に、売り上げが見込めないと出ない わけです。 今回のシリーズがそれぞれ何枚くらいプレスされたかは知りません。まったくの推測ですが、多くて も数千枚、それも下の方の2〜3000ではないかと思います。タイトルによって販売見込み枚数は違 うので少ない方は本当に1000枚だけかもしれませんし、多い方はもっとあるかもしれません。 今回のBMGのシリーズがリリースされることになった経緯もまったく知りませんが、当然ながらこれ を提案した人物がいるはずです。また、おそらく内容をどうするか相談された人がいるはずで、企画書 をまとめて上司を説得した社員がいるはずで、それにゴー・サインを出した上司がいるはずです。今回 のシリーズの売り上げが思わしくなかったら、提案した人は叩かれ、相談された人は信用を失い、社員 は立場を悪くし、上司は次回シリーズの企画にゴー・サインを出さないのではないでしょうか。社員は いきなりクビになったりしないでしょうが、外部の相談相手は関係が途絶えてしまいかねないです。こ の相談相手こそが内容の良し悪しやオリジナル・ジャケットがどうなっているか知っている人間なので す。で、会社側は新しい購入層が育つまで待って、次のシリーズは3年後とかになりかねないです。 1000とか2000とか3000とかの枚数だと個々人の購入枚数が大きく影響するのは理解でき ると思います。次回シリーズを望む人はタイトルで選ばずに全部買うべきでしょう。お金がない学生さ んとかでもちょっと無理してもう一枚買うべきです。もっと言えば、どうせ品切れになりネット・オー クションで高く売られたりするのですから同じタイトルを複数買ってもまったく問題ないでしょう。そ れどころか、そうすべきだとさえ思います。ネット・オークションで高く売れるかもしれないですし、 自分の探している他の紙ジャケと交換できるかもしれないのです。新品未開封であれば少なくとも定価 で売るのは簡単でしょう。 今回の中ではメダルやジェットや便所や洗濯女は広く考えればみな目玉アイテムでしょう。こういう のはみんなが買うのでなくなるのも早いでしょうが、プレスされた数も比較的多いと思われます。プレ ス数が少なくて、2〜3年といったスパンで考えて一番珍しくなりそうなのはフォルムラ・トレの2nd、 と予想します(競馬じゃねえっつーの)。まあ、フォルムラ・トレの1sttと2ndやRDMの1stあたり はやはり押さえておいた方がいいように思います。そして、それこそメーカー側が目玉商品と一緒に売 れてほしいと願っているアイテムに違いないだろうと思います。非目玉商品の売り上げこそが次回シ リーズへの鍵でしょう。プログレ・ファンに捧げる言葉は「全部買え、複数買え」です。 /////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
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