●神戸の某ビルエレベータに乗った。当方25階行き。おっちゃんが乗ってきて、「7階」を押した。そして「あっ」と小さく云って「8階」を押した。当方はそういう時に「7階」を消す方策を知っているのだが、まあいいか。

●機械は馬鹿正直だから当然のように「7階」に止まって扉を開きやがった。そしたらそのおっちゃんが「開」ボタン押しながら小拙に「どうぞ。」といった。なんでやねん、とおもいながらも小拙は「あ、いや、上なんで……」とか云った。おっちゃんは「あ、そう。」とか云いながら平然と「8階」で降りた。おもろいおっちゃんではあるが、急いでいる時にはやめて戴きたい。

●しかしよく考えてみると、おっちゃんの「どうぞ。」には可能性が幾つか残されている。まず、とっつあんが、ホントにボケてて自分が押したばっかりの「7階」を完全にボーキャクしてしまうケース。そしてその「7階」は小拙が押したものとおもい、「どうぞ。」と云った。しかも間違って押したのは小拙になっているというオマケ付き。

●次ぎにとっつあんが間違って押したのを自覚していて、それでも小拙が「7階」で降りる可能性がゼロではないとおもい「どうぞ。」と云った。もちろん可能性は全くのゼロではないのであるし、サルが「ハムレット」の音階を叩き出す可能性の「十の四万乗分の一」よりかは高いのかも知れない、し。(*1

●安野光雅の本(*2)にはこんな話が載っている。「混んだエレベーターで、二階で降りる人がいる。一階くらい歩いていけばいいのに、と思う。しかし、その考え方でいけば、例えば十階に行く小拙は九階で降りて歩かねばならぬことになる。」成る程。

●その段でいくと、「8」を押すと「7階」で止まるエレベーターがあれば節電になるかもしれない。そのエレベーターにはだから「2」はない。そんなことをしても8階に行きたい人は「9」を押せばいいじゃないかとお思いだろうが、その(どの?)ビルは8階までしかないのであった。

●だからその(どの?)ビルは8階建てなのだが、エレベーターのボタンは「3」〜「8」で、8階にはエレベーター施設が不要である。工賃も安い。

●2階から降りる者はエレベーターを使用してはいけなし、乗っても降りることはできない。3階から降りる者は乗ってもよいが「3」を押して2階で降りなければならない。とにかく降りる時には「3」である。

●そんなことをしても7階に行きたければ「8」を押せばいいじゃないか。と、思われる向きも多いかとおもう。しかし、それではあなた、何のためにわざわざこんな意味の無い仕組みを三菱に頼んで作らせた甲斐がないじゃない。

●そんなことができないように、ビルの管理人のおばちゃんはエレベーターの隅っこに24時間座って監視している。そして「ちょと、アンタ7階に行くんだったら7を押すのよ。そーすっとちゃんと6階に止まるから」とかいやらしい江戸弁でいうんである。

●この管理人のおばちゃんは多分間違っている。いや、絶対に間違っている。小拙は25階に行くときに「26」を押せないヒトだからおばちゃんが小用に行っている間にすっと乗り込んでも「26」を押せない。ま、この(どの?)ビルは8階建てだけんども。

●おばちゃんの方もそういう輩が多数輩出するのに耐えられず、エレベーター内に溲瓶と「トイレその後に」(小林製薬)を搬入し、これを使用するようになった。食事は店屋物である。天丼の翌日はピザーラ、と献立は精緻に考えられている。朝はモーニングサービスがお得です。 250円でホットにゆで玉子、トーストが付いておる。オヒヤにおしぼりまで付いておる。

●いつまでも椅子に座っていると痔になるといけないので、座布団はドーナツ型のものである。用を足すときにいちいちシュミーズを上げたりズロースを下げたりするのが面倒臭くなってきて、最近では梅田の東通商店街の某ランジェリーショップからエレベーター内に通販させた「おしゃれな穴あきショーツ24枚組」を使用するようになった。

●最近全く尻を上げないな、と思っていたら、椅子にも仕掛けがあって、穴が開いているのは座布団だけではなく椅子にも穴が開いていた。チューブ状のものを通じて椅子の下の仕込み棚に肥料が溜まる設計になっているようだ。三菱もエライ技術を持っていたものだ。

●小拙がもしその段でビルを建てるのであれば、エレベーターは2階から敷設する。これで全ての者が行きも帰りも1階分歩く分の節電協力体制が強制的に行える。

●●小拙は親切だから階段の半分はすべり台になっていて、降りる時にはそれを使用してもよいこととする。8階からすべり台で降りる練習を繰り返していると「すべり台名人」になれる。「バスピン名人」(*3)が福原愛ちゃんを泣かす時代だ。それくらいいてもおかしくはない。

●8階からすべる者がいる時に屋上に付けた滑車からロープで結ぶ。1階から8階まで上がりたい者がいたらそのロープの先を付ければケーブルカーの論理でお互いに電気ゼロで上昇と下降ができる。

●この場合、おそらく8階の者の体重が少し重い方がうまくゆく。1階の者が重い場合は、8階の階段横で待機しているおばちゃんの孫が8階の者にだっこしてもらって降りる。その時に1階の者は4階と5階の間ですれ違う時に孫に百円を渡さなければいけない。ボッタクリエレベーターなんである。

●8階まで行きたいのに8階から降りる者がいない場合は、若し7階に居れば2階まで自力で上がる。しかしこれでいくと7階の者は2階までしか降りられなくなる。そういう時も孫があらかじめ8階部分で乗っておく。この時は5階と6階の間で下の者と孫とがすれ違うからその時に50円渡さなければならない。

●もっとお急ぎの貴兄には消防署バリの昇り棒が付いていて、するすると降りてくる。8階の孫は傷害保険の3級試験に受かっていて、負傷時の保険代理店機能もある。恐るべき小学生なんである。

●水木しげるさんの漫画(*4)に縁起が悪いので3階の次を5階にしたビルの話がある。3階の窓から1階上の窓を見ると誰かが顔を出していて5階に行くと誰も居らず、下を見るとやはり1階下に居る。声をかけると「ちゃんと4階にいますよ」とか云うんである。4階に「だるま王国」があったりするんである。

●「だるま王国」のだるまは「だるまさんがころんだ」というと動けなくなる。大阪では「ぼんさんがへをこいた」という。ぼんさん=坊主も屁くらいする。が、いかにも大阪らしい直裁的な謂い。要は十文字の言葉。新しく作ってもおもしろいカモ。

●やってみよう。
「セイジカガウソツイタ」(政治家が嘘ついた)
「オカマガオカマホッタ」(オカマが交通事故をした)
「ブツメツハシキヤスイ」(仏滅は結婚式が安上がり)
「トモビキハシキヤスイ」(友引は葬式が安上がり)

*1『大きな数』P=J=デービス著、田島一郎・加藤勝・訳、河出書房新社・刊。ベートーベンの「運命」を叩き出す可能性も載っている。

*2『算私語録』(朝日文庫)

*3 和歌山で勃興した穴あき卓球台でおこなう「バスケットピンポン」運動。日本バスケットピンポン協会もある。「スポーツアミーゴ」というTV番組でバスピン名人が愛ちゃんと真剣勝負して勝ってしまい、泣かした。

*4 ゲゲゲの鬼太郎 第105話「迷宮・妖怪だるま王国」。『だるま王国』は4階にあるはずなのに、階段は3階と5階にしか行かない。途方にくれる鬼太郎たちだが、鬼太郎と猫娘だけが小だるまに導かれ、幻の4階に入り込む。


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まだいまだ p r o f i l e