「最近は海外旅行がブームやそうやね」
 「今ごろ何言うてんねんな。そんなもんもうだいぶ前からブームになってるがな」
 「ほんまかいな」
 「そやないか。今日ビどこででも旅行の話なんかしょっちゅう出てくるがな。ほんで海外旅行のブームがどないしてんな」
 「いや、僕もな一回嫁ハン連れて海外旅行とやらに行ってみよと思てな」
 「え、君はまだ行ってなかったんか」
 「そうや。君とこはもう済ませたんか」
 「済ませたんかて、予防注射みたいに言いないな。僕とこは行ったで、アメリカへ」
 「アメリカやったら行ったことあるわ」
 「なんや君、海外旅行へ行ったことないのと違うんか。アメリカには行ったことあんのんかいな」
 「うん。わりと何回も行ってるよ」
 「僕はこないだ西海岸の方を回ってきたんやけども、君はどのあたりに行ったんや」
 「いや、どのあたりもこのあたりも、地下鉄の駅からぼつぼつ歩いて行くんや」
 「それてアメリカ村のこととちゃうんか」
 「ちゃんとニューヨークの自由の女神もいてはるで」
 「御堂筋から見える奴やろ。あれはビルの屋上に付けたあるニセモンやがな」

 「金髪の姉ちゃんもウロウロしてるで」
 「それは、女子高生!」
 「犬も英語でワン!と言うとったで」
 「大阪の犬もワンじゃ!」
 「セントラルパークもあるで」
 「三角公園やがな!ニューヨークは人類のルツボやから。もっと大きいの!」
 「人類のウツボ公園か」
 「違うがな、もっともっと大きいねん」
 「大きさがちょっとちゃうか。負けとけ」
 「そんなもん負かるか!」
 「あかんか。前々からアメリカ村行くのにパスポートが要らんから、どうもおかしいなとは薄々勘づいてはおってんけどもな」
 「おかしいのは君の方やと思うけどなあ」
 「君は何しにアメリカへ行ってきたんや」
 「テーマパーク巡りをしてきたんや」
 「菊人形見にか」
 「それはひらかたパーク! 日本にもあるディズニーランドとかUSJの本場アメリカにあるテーマパークに行ってきたんや」
 「日本にもあんねんから、わざわざ飛行機に乗って行かんでもええんと違うんか」
 「日本のやつは本場アメリカのを持ってきたあるねんから、その本家のやつをわざわざ行って見るところに値打ちがあんねや」
 「ホウケ」
 「本家やがな。君も行くことを考えてんねんやったら、最近の海外旅行の傾向というもんを教えといたるわ」
 「え、海外旅行行くのにわざわざ恵子さんを紹介してくれるんか」
 「違うがな。今の旅行の傾向やがな」
 「その傾向というのは何なん?」
 「そやな、僕がテーマパークへ行ったように、何かひとつの大きなテーマを決めて行く、というのはひとつの傾向やな」
 「へえ、他にはどんなテーマがあんの?」
 「スポーツの好きな人やったら、海外で活躍してる日本の選手を応援に行くとか」
 「ほう、中々面白そうやな」
 「そやろ。イチローとか松井選手を見に行くんや。サッカーやったら、ヨーロッパまで中田選手の出る試合を見にいくとか」
 「ルバング島まで日本兵探しに行くとか」
 「何でやねん。もうおらへんし」
 「ほかにはどんなテーマがある?」
 「自分の好きなこととか趣味に合うたものをテーマにするのんがええな」
 「趣味というと」
 「絵が好きやったら美術館に行くとか、歴史好きやったら博物館に行くとか」
 「風呂が好きやったら風呂屋に行くとか」
 「外国で風呂屋てあんまり聞いたことないけども、まあそういうことやな」
 「パチンコが好きやったらパチンコ屋に行くとか」
 「日本にあるもんばっかり言いなや。あと、買い物とかグルメもテーマになるな」
 「買い物もテーマになるか」
 「なるなる。きちんと計画を立てて買い物をする、ということはテーマになるな」
 「なるほど。他にはどんな旅行がある?」
 「そやな、体験型の海外旅行があるな」
 「ヤラしいなあ。海外で初体験してくるのんか」
 「君の方がヤラしいわ。その体験と違ごて、山登りするとか、料理を習うとか、そういうことを楽しむ旅行のことや」
 「そういう自分の興味に合うた体験をしてくるわけか」
 「そうや、最近では修学旅行で海外へ行く学校なんかも多いねんで」
 「昔では考えられへんことやな。昔やったら外国行くのに船で何カ月もかけんと行かれへんかったのにな」
 「いつの時代の話やねん」
 「そしたら僕もそういう趣味とか好きなもんに合うた旅行を探したらええねんな」
 「そうや、ツアーの中から探すとか、それにいろんなオプションなんかを付けて自分に合うた旅行にしていくんや」
 「なるほどな、せやけど肝心の言葉の問題があるやろ、僕も嫁ハンもアメリカ弁喋られへんからなあ」
 「アメリカ弁て、英語のことか。そんなん簡単な単語をちょっと覚えたらええねん」
 「難儀やなあ。英語喋りながらタンゴも踊らなあかんのか」
 「何でやねん。ちょこっと英語の単語を覚えたらええんやと言うてんねん」
 「いやあ、そのちょこっとが覚えられへんねん。向こうの空港にある関所で英語で尋ねられるらしいがな。そういうことを聞いてるから海外旅行は敷居が高いねん」
 「関所て、あぁ、あの出入国管理のトコやな」
 「そこで何や英語でごちゃごちゃ聞かれるらしいな。僕はもうそこで脱落や」
 「そんなことあらへんて。今日ビみんな行ってるし、大丈夫や。ほんならここで練習してみよか。僕がアメリカ人の窓口の役したるわ」
 「そなたが関所の番人か、いざ」
 「時代劇の見過ぎとちゃうか、まあええわ。聞かれることは二つだけや。何日居るかと何しに来たんか、というこれだけや」
 「え、それだけでええのんか」
 「そうや、君の言う関所で聞かれることはそれだけや」
(大声で) 「一週間の観光!」
 「ちょっと、何やねん、急に大声で」
 「いや、大きい声で相手をビビらせて黙らせたろと思て。あかんかこの作戦」
 「あかんわ。そんなもん余計怪しまれて入国させて呉れへんで。ほんでそれを英語で言わなあかんねんで」
 「そうか。いや、先に攻撃かましとかんと負けてまうと思て」
 「何か勘違いしてる様に思うけども、まあええわ。ほな聞くでハウロング、アーユーゴーイング、トウ、ステイヒア?」
 「ノーじゃ!」
 「何がノーやねん」
 「いや、鮎のステーキ食べたか?て聞いたからノーやがな」
 「鮎のステーキと違うがな。ステイヒアや。そこに何日居りまっか、と聞いてるんやないか。そやから一週間やったらワンウイーク、でええわけや」
 「ワ、ワンウイイクて言うんか。そんな複雑な英語覚えられるかなあ」
 「誰かて覚えられるわ。次いくでワット、ザパーパス、オブユア、ビジット?」
 「ノーじゃ!」
 「またノーかいな。何でノーやねん」
 「いや、チビッたからパンパース穿いてまんのんか、て聞いたやろ」
 「アホ、誰が関所でそんなこと聞くねん」
 「ちゃうんか」
 「ちゃうわ!パーパス言うのんは目的っちゅう意味や。何の目的で入国するか、とこう聞いてんねんがな」
 「ほんまか。せやから観光やて言うてまんがな」
 「マンガナは通じひんぞ、君」
 「ほんなら観光でんがな、はどや」
 「マンガナもデンガナもあかん。観光を英語で言わなあかんねんがな。サイトシーイングて」
 「うわ、又難しい英語出してきたなあ。サ、サイトシイイング?」
 「そや、関所で聞かれるのんはその二つや」
 「最初の答えは何イクやった?」
 「何イクて何や、一週間やったらワンウイークや」
 「それそれ。ワンのウイーク。難しいな」
 「簡単や!」
 「ほんで次のんはサイと何やった?サイとカバか?」
 「アホ!サイトシーイングや」
 「それそれ、君天才とちゃうか」
 「ちゃうわ」
 「そうや!」
 「そうやて、どないしてん」
 「英語で聞かれんと外国にいっぱい回れるええ方法があった」
 「どんな方法やねん」
 「アメリカ村だけやなしに、地下鉄でヨーロッパ村まで行って、近鉄電車でスペイン村まで行くねん」
 「全部海外ちゃうがな!もうええわ!」

(終わり)

大阪シナリオ学校
第二回課題作品
テーマ 「海外旅行」


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