●プロ野球70周年の今年、シーズン中にパ・リーグの大阪近鉄バファローズとオリックスブルーウエーブが2:8の比率で合併し、大阪と神戸とを両本拠地とする新球団が出来る、という話が進んでいる。

●年間40億円ずつも赤字を抱えながら、これまで球団を運営していたのは、近鉄の意地のようなものか。親会社にとって、それに見合うだけの広告効果がなければやっていけないのは当然である。よくここまでやってきた、という評価はあってもいい。

●やっていけなければ、辞めるか売るかどこかと引っつくか、の三つの選択肢があるように思う。 6月19日に、神戸ヤフースタジアムで「Bw対Bu」戦を観たが、早くも「合併反対」の署名を求められた。

●小拙は署名しなかった。運営をやっていけないのであれば、上記三つの選択肢しかない、と考えたからである。「合併」は選択肢の一つである。それでも何とかやっていく、という四つ目の選択肢が示されていない限り、運動は徒労に終わる、とその時点では考えていた。

●実際に今春球団名を売って「大阪アコムバファローズ」にしようと画策したことも却下され、近鉄本社として存続させることは難しいと判断された。また阪急からオリックスに売却されたブルーウエーブは、01年度から巨人とオープン戦を行っていない。同年から開始されたパ・リーグのヘルメット広告もセ・リーグの反発を買った。

●大阪ドームに来るファンは「合併反対」を訴えるが、近鉄がこのままではやっていけないから次善策を出したのであるから、反対を訴えるのであれば合併を越える計画を示さなければならない。

●その点「アコムでええやん」というプラカードは、鋭いところを突いている。渡辺オーナーがヤクザな稼業に野球をさせられないと考えているようであるが、相手が日本銀行であればそれを許すのであろう。「アコムでええやん」は、渡辺オーナーに向けられた究極のメッセージに読めた。渡辺オーナーの中にオリックスがぎりぎりセーフで、アコム、ライブドアは問答無用でNGという結界、境界線があるのではないか。オリックスをそこまで許すのであれば、何故神戸でオープン戦を行わないのか。

●6球団が5球団になるので、パ・リーグはこのままでは存続できないという論が出た。ロッテの瀬戸山代表が韓国2球団、台湾1球団を加えて8球団で本当のパシフィックリーグを、と提案した。中々面白いし検討に値するものだと思うが、このまま行くと当のロッテ球団が西武と合併してしまい、来期は10球団で1リーグになってしまう。

●1949年に2リーグ制が開始された時はセ・リーグ8球団、パ・リーグ7球団であった。その歴史からみても球団数が奇数であるからいけない、ということは必ずしも無いと思う。ただし、1リーグ制に反対し続けていたのは巨人戦を持つセ・リーグの側であった。

●パ・リーグはセ・リーグとの交流試合もやって貰えず、卑屈にならざるを得ない。パ・リーグの全球団が何らかの形で求め、セ・リーグの全球団が何らかの形で反対するのは当然であろう。オリッ鉄の新球団は話の流れからいって、完全に1リーグ派に位置すると思う。

●小拙自身は、例え両本拠地であっても大阪に球団が残るのであれば、新球団を応援したいと思う。しかし、このまま!リーグになることが本当に野球のためになるのかどうか。パ・リーグのオーナー会議で実質何も決定出来なかったということは、パ・リーグにはやはりセ・リーグに未練があって、渡辺オーナーに判断を委ねたということである。

●言葉の正確な意味から考えると、コミッショナーというのは「全権を委託された最高責任者」ということになる。その人が自分には何も決めることは出来ない、というのは、どういう側面から考えても病んでいるとしか思えない。何故そこまで完全に渡辺オーナーの傀儡とならなければならないのか。両リーグの会長に至っては、単なるポストにしか過ぎない。

●市町村の合併などでは必ず反対する人が居て、まず住民投票を求める。そして合併推進議員名を公表する。合併しなければ破綻する自治体にとって、合併によるデメリットが合併しないでいることのメリットを上回らない限り、常に議論検討しなければならない問題だと思う。

●ファンの署名活動に両軍の選手会も参加するという。12球団の選手会代表の古田選手の主張は最も冷静で適切であると思う。まずこんな大切な問題に対してもっと時間をかけて当事者が議論しなければいけないし、その為のテーブルを用意しなければならない。パ・リーグがもう終わり的な読売新聞の論調には流石についていけない。

●アメリカには大小合わせて約20もの野球のリーグがあるという。そういうベースがあるからこそ頂点が「大リーグ」なのであろう。近鉄も大阪ドームを藤井寺に戻し、グリーン車を二等に変え、ホテルを寄宿舎にし、年俸を見直す、といった本当に経費を減らす努力をしたのか。もっとファンに近い身の丈サイズで球団を運営する、ということをJリーグから学ぶことはできなかったのか。

●逆にパ・リーグをもっとセ・リーグから離し、日本シリーズで戦うだけの位置に置いた方がもっと面白いことが出来るのではないか。例えば外国人枠をとりはらって、外資系企業が連合して外国人メインの超カッコいい新球団を作る。日本の野球市場が一部の外国人選手のものから開放する必要があるように思う。

●ライブドアの堀江某は、「自分はしつこい」ので最後まで諦めないそうである。本社を大阪に移転させ、球団名を「大阪バファローズ」にする、という。そこまで言うのであればやはり「しつこい」ではなく「ひつこい」と言って欲しかった。

●南方熊楠は、県吏などが行った神社の合祀に反対した。その理由として、1)敬神思想を薄うし、2)民の融和を妨げ、3)地方の凋落を来たし、4)人情風俗を害し、5)愛郷心と愛国心を減じ、6)治安、民利を損じ、7)史蹟、古伝を亡ぼし、8)学術上貴重の天然記念物を滅却す、とした。(明治45年2月9日、白井光太郎宛書簡より)球団の合併問題にもそのまま当てはまると思う。

●そして、現在何よりも先に合併しなければならないのは、南北朝鮮であり、員数だけの衆議院と参議院であると思う。ライブドアが38度線と板門店の買収を表明すれば、交渉の協議は可能なのではないか。

2004年7月12日号掲載


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