9月某日
 そうだった。12歳のクソガキによる反吐の出そうな事件が、性懲りもなくまた起きたんだった。かの神戸の連続児童殺傷事件の犯人、酒鬼薔薇聖斗こと東真一郎の仮退院が決定して間もないこの時期、なんと象徴的な出来事であろうか。

 このような事件が起こると毎度、訳知り顔の弁護士や想像力の貧困な自称人権擁護者が、10年一日のごとき環境要因論を原因として挙げ、“犯人も被害者だ” などと恐ろしく犯罪的なタワ言をだらしなく排泄する。

 また脳味噌の容量のかなり少ない政治家が、不用意な発言を連発しまくるのも、茶番としては楽しめること請け合いだ。いきなりやってくれたのが鴻池祥肇・構造改革特区担当相の“親を市中引き回しの上、打ち首”発言。だいたい使われている言葉自体、知性・品性・感性がゼロベースで、この程度の人物を官僚として戴くこの国のとてつもない民度の低さを痛感させられる。

 最初、この事件のニューズを聞いたとき、ロシアの最凶悪性犯罪者 チカ・チーロを筆者は想起した。このチカ・チーロは不能で、幼い子供を惨殺した瞬間にえもいわれぬエクスタシーを感じ、結局、この感覚を反芻するために52人もの少年少女を森に連れ込み殺害したのである。モスクワ オリンピックの行われた1980年のことだった。

 “少年は、おとなしそうに見えても快楽殺人者。しかも彼の障害は非常に深刻です。少年の行動だからとカウンセリングすれば一般社会に復帰できるなんていう考えは言語道断です。Aに限らず、本人が犯罪を犯す社会的危険性がなくなるまで、20歳でも25歳でも社会に復帰させないシステムを考えるべきです”

『52人を殺した男』の翻訳者 小田晋・帝塚山学院大教授(犯罪精神医学)は言う。実は小田教授って、なんでもかんでもスグ決めつける悪癖の塊のようなおヒトで、問題発言連発なのだが、無責任に面白がる分には十分下世話なので、三流週刊誌のこのテのコラムには実によく登場する。

 刑法第41条には「14歳に満たない者の行為は、罰しない」と規定されている。つまり現行法では、未成年でありさえすれば何をしても無罪放免が法的に補償されるのだ。しかし、なぜ、刑法第41条にはそう規定されているのか? についての合理的な説明を未だかつて筆者は聴いた事がない。誰か是非、教えてください。

 また、年齢には一切関係なく、精神鑑定で一度、心神喪失者との認定を勝ち取れば、血税を使って手厚く保護され、懇切丁寧な治療まで受けさせてもらえる。かの東真一郎はそうやって、今、正に社会復帰を果たそうとしている。もはや殺人事件・傷害事件は、治療の必要な心神喪失者を発見するためのナイスな機会に過ぎない。こんな連中の被害者なんかになった日にゃあ、死んでも死にきれんわなぁ…

 多くの自称人権論者が“厳罰主義で犯罪を防止することはできない” とまるで神様の代理人ようなことをおっしゃる。神様の代理人なんて誰も頼んでないのに。犯罪はコンピューター世界におけるバグのようなモノで、防止することなんて、どんな方法を使ったところで出来るワケがない。こんな方便は単なる問題のすり替えである。

 何を置いてもまず第一にここでやるべきことは、被害者の報復感情、そのやり場のない怒りをいくばくかでも和らげ、救済する方法を模索することだ。現行法は犯罪者の権利を守ることに夢中で、この要請には信じられないくらいに何も応えていない。

被害者の言葉に静かに耳を傾けよう…http://www.campus.ne.jp/~zonozono/ane/

 ところで、“責任能力”と言う摩訶不思議な法律上の概念だが、なぜ“責任能力”がないと犯罪者を罰することが出来ないのだろう? 人権と責任能力の関係について、つまり心神喪失者の人権について、法律理論はどのような合理的な落とし前をつけているのだろうか?

 ま、いずれにせよ“責任能力”の有無とは一切関係なく、犯罪者は何の関係もない人々を不幸のどん底に突き落とした償いを一生涯続けなければならない。当然のことだ。罰せられないこと=無罪 では断じてない。

 最近、面白い裁判記事を見た。


…拉致して殺害後、親から身代金を受け取ったとして殺人、拐取者身代金取得などの罪に問われた無職 ●×△の論告求刑公判で、検察側は死刑を求刑した。検察側は論告で「自己中心的で、身勝手極まりない犯行。何の落ち度もない被害者の無念さは想像を絶するものがある」と指摘した…

[03年7月29日12時18分更新]


 これって、長崎の12歳のクソガキにこそ、まったくもって該当する論告だよなぁ。もうひとつ。


…飼い犬が通行人にかみつきけがをさせた事件で、人をかむのが分かっていながら引き綱を外したとして傷害罪に問われた飼い主の判決公判が開かれ、懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役3年)、犬の没収を命じた

[03年7月29日13時58分更新]


 犬って責任能力ないと思うけどナァ…


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[猟奇的な日記]
12歳の少年犯罪
〜出口のない議論〜

w r i t e r  p r o f i l e




今週の推薦作品
円谷プロ 怪奇大作戦 
第24話『狂鬼人間』



●TV番組の放送事故特集では必ずと言って良い程登場する王様的エピソードである。初回放映は昭和44年2月。この作品を見ると当時の人権意識や現在の言葉狩りの状況が実によく分かって興味深い。ドラマにはかなり大きな矛盾がいくつもあるが、ここでは筆者の感想は述べず、純粋にストーリーを紹介するのみに止める。ドラマ内で登場する単語はそのまま使用(特に下線部)したが、昭和44年の時点ではこういう表現も問題なく使われていたということも認識いただきたい。

●深夜の操車場でデートを楽しんでいたカップルが女性に襲われ、男性がナイフで殺害された。精神鑑定の結果、女性は完全な精神異常者ということで無罪となる。ところが、殺人が無罪になるほど重度の精神病が、わずか数ヵ月で完治し、犯人の女性は東京精神病院を退院する。

●短期間に同じような事件が8件も続き、事件の不自然さに疑問を持った町田警部は、SRI(サイエンス リサーチ インスティテュート:科学的犯罪鑑識研究所といったところか。民間組織)に協力を要請する。

●犯人の女性が件のカップルの女性も殺害した。しかし、今回は精神に異常は認められなかった。町田警部とSRIの研究員 牧の取調べに、彼女は失恋の末、自殺未遂を計って大怪我をし、その入院中、脳波変調機によって人工キチガイ=狂鬼人間を作り出す“狂わせ屋”の見舞を受け、その“狂わせ屋”が“憎い相手を殺して、しかも無罪”になる殺人計画を持ちかけたと白状した。

●“狂わせ屋”の正体は、日本有数の脳波の研究者 美川夫妻の冴子夫人であった。彼女は子供にも恵まれ平和に暮らしていたが、ある日、自宅に乱入してきた精神異常者によって、家族を惨殺され、さらに家まで燃やされてしまう。ところが精神異常者の犯行という事で、現行の刑法第39条で規定されている通り「心神喪失者の行為は、これを罰せず」。

キチガイが野放しにされ、またその被害者が救済されない世の中に恨みを抱いた美川は、このような世の中そのものに復讐することを決意する。それが死んでいった夫と子供の供養になると信じて。正に脳波変調機は“完全犯罪製造器”だったのだ。

●SRIの活躍で美川もついに捕まる時が来た。しかし、彼女は逮捕される直前、脳波変調機を最大目盛りで稼動させ、誰も追いつけない世界へ旅立つ。

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