銀幕ナビゲーション-喜多匡希

アイム・ノット・ゼア

ポエティックな世界観に酔いしれた!  あとで読む

アイム・ノット・ゼア
© 2007 VIP Medienfonds 4 GmbH & Co.KG/All photos - Jonathan Wenk

 <6人の俳優がボブ・ディランを演じる> というプロット、実はコレ、演劇的にさして珍しいものではないのである。しかし、そこは才人のトッド・ヘインズ監督。見事に捌いてみせた。トッド・ヘインズは、かつて『ベルベット・ゴールドマイン』で、グラム・ロックの世界を描いて見せたが、自身の性的嗜好に流されたのか、やおい的作品に仕上げてしまった過去があり、些かの危惧を感じていたが、今回はダイジョーブ。

 流麗なモノクローム映像とカラー映像の交錯と、ボブ・ディランの名曲の数々が彩るポエティックな世界観に酔いしれた。6人の俳優がボブ・ディランをそれぞれ演じているわけではなく、ボブ・ディランという人物の中に潜む6つのエレメント(要素)を演じているというのが面白い。一つ一つのエレメントには、それぞれの名前が与えられ、その境遇も年齢も全く異なるが、それらは全てボブ・ディランの一部なのだ。

 そしてそして、最も重要なのは、本作を鑑賞して、あれこれと考えを巡らし、一つ一つ紐解きながら、ようやく答えらしい答えを見つけて自分なりの解釈が成り立ったと思ったら、そこにはもうボブ・ディランはいないということ。そう、まさしく <アイム・ノット・ゼア(僕はそこにはいませんよ)> なのである。トッド・ヘインズ、お見事!!

アイム・ノット・ゼア http://www.imnotthere.jp/

4/26〜 東京:渋谷シネマライズ、シネカノン有楽町2丁目、立川シネマシティ
4/26〜 大阪:梅田ガーデンシネマ、シネマート心斎橋
4/26〜 兵庫:シネカノン神戸
5/3〜  京都:京都シネマ
5/31〜 大阪:高槻ロコ9シネマプラス
6/21〜 和歌山:ジストシネマ和歌山
ほか、全国順次公開予定

2008年5月5日号掲載 このエントリーをはてなブックマーク

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