忘8ビデオ道-text/用心棒

『オーバー・キル』
チャック・ノリスの <七光り> が生んだ
木曜洋画チックな佳編

 6年連続で全米空手チャンプに輝いたにもかかわらず、一般的には

『ドラゴンへの道』でブルース・リーと対決した人

或いは、

『地獄のヒーロー』でスタローンやシュワルツェネッガーに対抗したのに、失笑買った人

程度の認知しかされていないチャック・ノリス。

 一言で言えば「華が無い」のだが、そのチャック・ノリスにも、弟の主演作を作らせてしまう位の七光りはあった(今は無い)

 その弟の名はアーロン・ノリス。

 長年、兄のスタントマン、兄の主演作の監督として日陰を歩き続けた結果、今までの鬱屈が爆発したのかどうかは知らないが、突如としてアーロンの主演作が日本でリリースされた。

 タイトルは「オーバーキル」。

 はみ出し刑事がガサ入れ中、興奮のあまり同僚刑事に怪我を負わせてしまい、上司に「頭を冷やせ」と強引に休暇を取らされるが、休暇先で現地の犯罪組織の暗闘に巻き込まれて適当に暴れてハッピーエンド――という、実に木曜洋画チックというか、単に兄貴の主演作をダビングした様な話

 アーロン本人は「俺様の(最初で最後の)主演作だぜ!」と演技が空回りだわ、共演者が「『ヒドゥン』がキャリアの頂点だったマイケル・ヌーリー」以外「どこで集めてきた?」と言いたくなる様な面子だったのも何とも……せめて兄貴のカメオ出演でもあれば、と思ったが、ここは好意的に、チャックは「俺が出たら折角の弟の晴れ舞台に水差す事になるし……」と自ら退いたと思う事にしたい。(出たからと云って映画の出来に全く関係ないが)

 最後にこの映画、たまに中古ビデオ屋で見かける事があるので、「こういう映画を観ても怒らない人」なら、一度お勧めしたい。

2008年7月7日号掲載 このエントリーをはてなブックマーク
外部リンク:[]チャック・ノリス伝説

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