銀幕ナビゲーション-喜多匡希

能登の花ヨメ

【 さまざまなギャップを巡る、
郷土色豊かな人間ドラマ】 あとで読む

能登の花ヨメ
©「能登の花ヨメ」製作委員会

 神戸を舞台とした青春映画の佳作『She’s Rain』(1993)以来、実に15年振りとなる、白羽弥仁監督の劇場用長編映画第2作は、タイトルからも判る通り、北陸・能登を舞台とした郷土色豊かな人間ドラマだ。

能登の花ヨメ
©「能登の花ヨメ」製作委員会

【挙式準備中のみゆきは、仕事も辞め、東京で胸弾む毎日を送っていた。しかし、そんなある日、能登で一人暮らしをしている婚約者の母・松子が足を骨折したという報せが入る。運悪く、婚約者は海外出張中。みゆきは、身の回りの世話をするため、単身、能登へと渡るのだが……】
というストーリー。

 様々なギャップを巡る作品だ。大都会・東京生まれのみゆきには、伝統的風習が息づく能登の文化になかなか馴染めないし、松子との年齢差から生じるジェネレーション・ギャップも相当なものがある。とはいえ、近く義母となる松子に知らん顔はできない。当初は、郷に入らば郷に従えとばかりに、けなげに尽くそうとするみゆきだが、擦れ違いの連続が松子との溝を深めていく。逆に松子から見れば、みゆきは料理も出来ず、近所とのつきあい方も知らない常識外れの女性と映るだろう。両者の溝が、どんどん深まっていく過程には説得力がある。

能登の花ヨメ
©「能登の花ヨメ」製作委員会

 松子の家に頻繁に顔を見せるフジばあさんがイイ味。演じる内海桂子の、作品全体をふんわりと包み込むような抜群の助演振りは見物だ。

 クライマックスは、久方振りに復活するキリコ祭りと、みゆきの嫁入り風景の二段構え。楽しげな祝祭と、厳かな伝統儀式の対比が利いており、温かい気持ちにさせられた。全体的に、オーソドックスな演出で、奇をてらうことなどない。ベタと言えばベタな演出だが、確実丁寧な筋運びには安心させられる。地味だが、心ある良作である。

能登の花ヨメ
©「能登の花ヨメ」製作委員会

 尚、本作は能登半島地震復興支援映画とのことである。クランク・イン直前の2007年3月25日、大地震が発生し、撮影は延期に。被災者に対して、何か出来ることはないかと考えて、急遽、脚本を作り直したという。そのため、当初の構想とは、まるで違った作品とし完成したそうだ。阪神大震災の被災者である白羽監督の心が、神戸と能登を結んだのである。

能登の花ヨメ  http://www.notonohanayome.com/

2008年 日本 114分 配給:ゼアリズ・エンタープライズ

監督:白羽弥仁
出演:田中美里、内海桂子、甲本雅裕、池内万作、松尾貴史、平山広行、水町レイコ、松永京子、八木優希(子役)、辻口博啓(友情出演)、本田博太郎、泉ピン子、ほか

【上映スケジュール】
12/6(土)〜 大阪:第七藝術劇場→〜12/19(金)迄
京都:京都シネマ→〜12/19(金)迄
兵庫:シネカノン神戸→〜12/19(金)迄
1/17(土)〜 福岡:シネテリエ天神
にて公開

2008年12月7日号掲載 このエントリーをはてなブックマーク
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